ジーンズ、ショーツ、靴下と順番に脱がしていく彼はひどく楽しそうだった。
すべてがむき出しになったからだを彼は、オスの目を隠そうともせずに見下ろしながら着ていたTシャツを乱暴に脱ぎ去った。はじめて見た彼のからだは、今まで彼女の見てきた数少ない男のからだのどれとも違っていた。細いけれど貧弱でもない、無駄なつくりの少しもない骨と肉は、彼のどんなささいな動作にもそれに見合った躍動を皮膚のむこうから伝えてくれて、彼の鋭い目と合わせるとまるで俊敏さに優れた野生の動物のようだった。彼女は、自分が獲物にでもなった気がした。食われるんじゃないかとおもった。彼になら食われてもいいともおもった。羞恥心も今まで知らなかった類いの感覚もそのために必要なものなんだとおもえば、捨てきることはできなくても受け入れることはできる気がした。覆いかぶさってきた彼の肌が自分の肌に直接触れる暖かさは、手を繋いだときと比べ物にならないくらいの心地よさと安心を与えてくれるんだと、知ったときにはもう、じわじわと湿った熱に頭も心も食いつくされていた。
胸や腹や太ももや、指さきから足のさきまでからだじゅうの皮膚を埋めつくすほど丁寧に、くちづけられて舐められて撫でられて、たまに噛まれて、そのたびにくちびるの隙間からこぼれる甘ったるい啼き声やすすり泣きに何度も逃げ出したくなったけれど、かわいい、かわいい、と言い聞かせるみたいに繰り返し耳元にささやいてくれた彼の、低い熱のこもった声に、こんなみっともないもので彼が喜んでくれるなら、いくらでも差し出そうとおもった。


「ここ、」

とささやく彼の声とともに、臍からまっすぐ下を撫で降りてきた彼の手が、足のあいだにある緩やかな丘をえがいた場所までたどりついた。彼は手のひらでそこを、そのうえの茂みごとふにふにと揉みながらなか指だけをそっと、襞と襞のあいだに這わせた。

「っ、ふっ」
「濡れてんの、分かるか?」

言葉の意味をみせつけるようにゆっくりと、ゆびがそこを行き来しはじめる。

「ぁ…ッア…っ」

かさついてるはずの彼のゆびは柔らかい肉の合わせ目をぬるぬるとなめらかにすべっていて、すべるたびに腰から下がひくんっ、ひくんっ、と跳ねた。彼女のからだからあふれたものがそうさせてるんだと、ささやく彼の耳もとにふきかける吐息に、からだがかぁっ、と熱くなる。

「っ、ひぅっ」

襞をめくった奥へとゆびが忍びこんだとき、咄嗟に浮いたからだは彼の体重に押さえ込まれた。薄い茂みを掻きわけながら、もうひとつゆびが近づいてくる。
最初のゆびのとなりにそれをうずめた彼の、浮かべてみせた笑みがひどく男くさくてやらしくて、なのに格好良くて、目が離せなかったその隙に、襞の下に隠れていたじくじくと腫れぼったいとがりを、ふたつのゆびにきゅ、とつねられた。

「ぅあンっ」
「クッ…かーわいい声だなァオイ」

勝手にこぼれ出た子犬みたいな啼き声に、彼が喉を鳴らして笑う。けれどそれになにかをおもう余裕もなかった。ゆびに挟まれたそこをくにゅくにゅといじられて、下腹の奥のほうが信じられないくらいうずきだした。

「あ、やっ、やー…っ」

自分ではどうすることもできないもどかしさに、シーツに頭をこすりつける。まるで力の入らない手が彼の肩からすべり落ちて、同じ布のうえをさらさらと彷徨いはじめた。
滲んできた涙を彼は優しく舐めとりながら、空いたほうの手でなだめるように頬を撫でてくれたけれど、だからっていじるのを止めてくれるわじゃない。

「っ、あぅっ」

さっきまで何度も舐められていじられて充血してしまった胸のさきを甘噛みされて、つまさきがぴんと伸びた。休ませてもらう暇もなく同じ場所を今度は、ぬめった舌に絡めとられて、震えるほどのむず痒さに、んんンっ、と甘い鼻声が漏れる。
汗よりもっととろみのある体液が、彼のゆびの入り込んだ場所からあたらしくとろとろとこぼれるのが、足のあいだを伝っていく感触でわかって、そのくすぐったさだけでもからだは小きざみに震えた。
気持ちいいのかどうかなんて分からなかった。ただひたすら熱くて、もどかしくて、なのにそれをどうやって耐えればいいのかもやっぱり分からなかった。だってそんなこと、今まで誰も教えてくれてない。
彼のゆびが動くたびに、ちゅ、くちゅ、とくちづけに似た湿っぽい音が聞こえるようになった、そのころになってやっと、彼のゆびは動きを止めて、両方の胸を好き勝手にいじめていた舌も同時に大人しくなった。おもわずホッと息をつけたのは、けれど一瞬だった。
ゆびのひとつが、こぼれてくる蜜のみなもとをさぐるように、からだのもっと奥のほうまでもぐりこんできた。

「あ…っ、ああ…っ」

からだのどこよりもやわらかくて潤んだ熱い肉をこじ開けて、ゆびは奥へ奥へとうずまっていく。そこはひどく狭いくせに彼のゆびをするする飲み込んで、あっというまに、ゆびのつけ根は外となかの境界線にぶつかった。
ゆびに隙間なくはりついたその肉は意思と少しも関係なくうごめいていて、ゆびのかたちや、大きさを、あからさまに教えてくれた。ただでさえ熱いからだがもっと強く燃えて、それを外に逃がそうと全身から汗がぶわっ、とにじみ出る。 からだのなかに自分じゃないものが入り込むはじめての感覚に、怖いだとか恥ずかしいだなんていう当たり前の感情は飛び越えた。わけも分からないままがたがた震えるからだを、ただ本能だけで彼にしがみつかせた。

「しん…しんすけ…っ」
「…ンな怯えんな」

怖ェこたァなんもしねーから。子供に言い聞かせるような甘さでささやくその声に合わせて、汗で張りついた前髪を、彼のゆびがそっとよけていく。
熱で潤みきった肌よりはほんの少し冷たい指先が気持ちよくて、まぶたを落とせば、そのうえに彼のくちびるが触れたのがわかった。頬、額、こめかみから目じりへと、顔のそこらじゅうに降りそそいだくちづけは、くちびるに届いたところで彷徨うのをやめて、代わりに何度も繰り返し限られた範囲のそこに落ちてきた。触れるだけのくちづけも、髪を梳くゆびも、まるでじゃれつくみたいな優しさで、くすぐったさに自然とこわばったからだがほどけた。少しだけ笑いさえした。
そしてそれを待っていたように、なかにあった彼のゆびが動きだした。

「ぁンっ、んンっ」

同じタイミングで舌が入り込んだせいで、こぼれる隙間を減らされた声はくちのなかにこもった。
髪を梳く手は変わらず優しくて、うごめく舌は素直に気持ちよくて、なのに、浅いところと深いところを怖いほどゆっくりと出入りするゆびはもどかしかった。いっぺんに襲うまるでちがう感覚に、混乱したからだがびくびくと跳ねあがる。

「んっ、ぅンっ、ンんふっ」

彼のゆびのとおりにかたちを変えていくやわらかい内壁は、もっと奥からこぼれるとろけた蜜で舌のようにぬめっていた。飲みこんだゆびを、まるで飢えてるみたいにきゅうきゅうと不規則に締めつけてはしゃぶって舐めつくしたがるそこを、彼はゆびの腹で撫でこすってなだめながら、じゅくじゅくに熟れたなかを掻きまぜていく。
そのたびに鳴る湿っぽい音は、はじめて聞いたときよりずっと大きくて、それにいやらしかった。からだのなかを這いまわる疼きは膿んだ傷口みたいにもどかしくて、逃げようともがくからだが無意識にひざとひざをすり合わせるけれど、うすく肌をおおう汗がこすれあう感触につまさきがふるえることしかできない。

「ンふぅっ、ぅーっ」

今まで知らなかったやらしい音と感覚のなかでゆいいつ知ってる彼の深いキスに、すがりたいのに、許容量を越えた熱を吐き出すための浅い呼吸はそれを許してくれなかった。逃げ場を無くした唾液がくちの端を伝い落ちる。
苦しくて自分からくちびるを離したそのタイミングで、大人しくしていたはずのもうひとつのゆびがなかにうずまっていった。

「っ、ぁ…」

一緒になって動き出すふたつのゆびはやけに重たく感じて、気がついたら彼の肩を掴むゆびにちからを込めていたけれど、ところどころで息がつまったのはそれでもほんのすこしの間のことだった。すぐにまた、もとのわけがわからなくなるような感覚に埋めつくされた。増えたゆびに共鳴するみたいに、あふれ出した蜜がそこを濡らしていく。
濡れていくのはそこだけじゃなかった。ぐちゅ、ぐちゅ、とぬかるんだ音と一緒に、からだのなかまでがぐずぐずに溶けた熱で濡れていくものだから、出口のないまま溜まっていくその波に溺れてしまいそうだった。なのに溺れきることもできなくて、余計にもどかしくなった。助けてほしい、とおもった心を読んだように、彼が頭を抱き込むように手をまわしてくる。
サイドの髪をどかしたさきにあらわれた耳を、さわって遊びだす彼の、自分とはまるで違う、すじばった肉をまとった腕がすぐそばで躍動しているのを見つけて、それがひどくたのもしくおもえた。おもわず甘えてすり寄ったら、彼のかすかに笑う気配がした。

「ほんっと、かわいーわオマエ」
「んン…っ」

耳たぶに舌が這ってくる。耳のかたちをたどりながら舌はなかまで潜んできて、くちっ、くちっ、とこもった音と濡れた感触に、産毛が逆立つようなゾクゾクしたものが背筋を駆け抜けていくのを、やり過ごすのに精一杯で、だから熱い息とともに吹き込まれる彼の言葉をまともに聞いてる余裕はなかった。彼がつぎになにをするのかなんて、考える余裕はもっとなかった。
それまで届く範囲を戯れに撫でるだけだったおやゆびが、あの、さわられるとたまらなくもどかしくなるとがりを最初よりもずっと強くこすってきた。

「アッ…やっ、しんっ、やだ…っ」
「聞けねェなァ」
「っ、あー…っ」

はじめて声にした抵抗を簡単に切り捨てて彼は、ぷっくり勃ちあがったそこをくにくにと押しつぶしはじめた。
さっきまでさんざんいじられていたそこは、いまではもう赤くただれたように腫れていて、守るもののなにもないむき出しの神経のかたまりだった。彼のゆびのどんな動きも逃がさず受け取ると、それをぜんぶ、頭がおかしくなるくらいの疼きにかえてからだじゅうにばらまいていくのだ。なのに同時に、からだの奥にうずまったゆびを引き抜かれたり、また押しこまれたりされたら、もうほんとうに、わけがわからなかった。

「やっ、やぁーっ」

ぼろぼろこぼれる涙を舐めとってくれる彼の舌にまで息がつまって、からだがびくびく震えて止まらなくなって、意志と無関係に漏れる声が気がついたら子供みたいにしゃくり上げていた。彼にすがる手がまたすべり落ちて、それを彼に元の場所まで戻してもらって、それでもまたずり落ちかけた手を必死で伸ばしたら彼の髪を掴んでしまって、痛ェよ、と苦笑いした彼は、けれど止めてはくれなかった。
やっとなかのゆびからもいじるゆびからも解放してもらえたころには、だからもう、頭のなかは曖昧だった。涙の膜に邪魔された視界も同じくらい曖昧で、けれどそれだって、サイドボードから取り出した小さな四角いものを彼が、噛みちぎって開ける光景にホンモノの動物みたいだとおもったり、スウェットを下着ごとわずかにずり下げた彼の、興奮した性器にびっくりして目を反らしてしまったり、はじめてみたゴムに、どうやって使うのか気になって盗み見してしまうだけの猶予は残されてたのに、彼が、からだのなかを侵しはじめたときにはそれさえ残らなかった。
ぜんぶをうずめきった彼にキツいか?と聞かれても、だからわからなかった。ふっ、ふっ、と短い息を吐く自分が息苦しいのかどうかもわからなかったし、からだが熱いのか冷たいのかもわからなかった。奥深い場所を襲う彼の、熱くて重たくて大きいものが与えてくれる鈍い感覚が痛みなのかどうかもわからなかったけれど、ただ、腰を動かす彼の、首すじを伝う汗や、ピンと力のこもった腕や、荒い息や、欲に濡れた瞳に、動物みたいだとおもった。自分も動物になってしまったんだとおもった。いつもけだるいばかりの彼をそこまで追いつめたのが自分だとおもうことに、ひどく興奮してる自分も、彼とおなじ動物なんだとおもうと、嬉しかった。
自分のすべてが、彼のためにつくり変えられた気がした。


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同時進行でおにーちゃんも銀さんといちゃいちゃしてるんだとおもいます。もっとイロ
イロただれたことしてるだろーけどね!
たかすぎにかわいいかわいい言わせたかったってゆう。おっさんだからね!
見なおししたくない。


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