「やっぱテメェか」 見慣れすぎた腐れ縁は、どんなに苦い顔をつくったところですこしも気にした素振りを見せなかった。よれたシャツとジーンズで、だるそうにドアへもたれかかりながら、銀髪が差し出してきたものに高杉は、ゆがんだ顔をさらにゆがめた。 「ンだこれ」 「マヨチャーハン。トシちゃん腹減らしてっだろーとおもって」 大皿のうえに、山盛りになったチャーハンの頂上から、顔をあげればニヤつく銀髪と目が合う。 「目一杯張り切っちまいましたって顔に書いてあんぜ?」 「テメェに言えた義理かよ」 「ハハッ、違いねェ」 機嫌良さそうに笑う銀髪に、つられてくちびるを持ち上げてやるくらいには、ありがたいきもちもあった。驚くほどよく食べる彼女の、飢えてないわけがない腹を、満たしてやれそうなものなんて家には欠片もない。だからって外に出る手間もいまは惜しいと、おもってるのは彼女だってきっと一緒だ。 ふたりの時間を邪魔するものを、取り除く手伝いを、けれど無償だとおもえない程度に目の前の男とは短くない付き合いだった。要求はなんだと、問いかけた視線に、いつもより飛び跳ねた髪を銀髪がだるそうに掻きまわす。 「トシちゃんにさァ、とーしろうにはぜってー秘密なって言っといてくんねェ?」 「…見たのかあいつ」 「完全に固まってたね、ありゃあ」 口聞いてもらえなくなったらどーすっかね、と、たいして気にもしてない口ぶりで銀髪が、悩むふりをしてみせる。 「あの年頃の子ってケッペキだしよォ、ばっちいモン見る目で見られちまったら、俺はともかくとーしろうがなァ」 「いらねー心配だな」 ククッ、と、喉を鳴らして笑ってみせた、それだけで、死んだ目を心持ち見開いてみせた銀髪の、読み取ったものが、間違ってないと確信できるだけ、自分の性分も知られている自覚はあった。 おかしいとおもってはいた。いままで自分から誘うこともできずにいた彼女に、すこしの時間も待てないほどの火をつけた、その理由に、おもいあたらないうちはどうでもよかった。なのに明確になったいまは、彼女のくちから直接聞き出してやりたかった。見たままを言わせて、そのとおりのことをしてやったら、彼女はきっと泣くだろう。 そのときは死ぬほど優しく慰めて、それからまた泣かせてやればいい。彼女が求めるものにはすべて応えてやる、代わりに、自分が求めるものはこえも、からだも、なみだもぜんぶ、差し出してもらおう。 気を失うまでと、約束したこれからに、眠気なんてふっ飛んだ。企むまま細めた目に銀髪が、苦笑いで返す。 「あんまいじめてやんなよ?」 「テメェに言われたくねーっつってんだろ」 「そりゃ失礼しましたねェ」 あーあ。と、わざとらしいほどおおげさなため息を、吐きだしながら銀髪が顔をうつむける。 「かっわいそーに」 含み笑いに入れ代わったそのくちから、こぼれたことばには、鼻で笑ってかえしてやった。 end. えろほんを書こう!って張り切ってみたはいーものの、 えろちっくだけじゃまったくおもしろくなくなってしまった結果が これです。いつもと変わらないただのいちゃいちゃです。 ちなみに自分のなかで決めてたトラップを打ち明けてみると、 1話目:覗き見トシちゃん、ひとり上手トシちゃん、えろ杉おいしく登場 2話目:推し量ってください。 3話目:強気にゃんにゃんトシちゃん 4話目:せいいっぱい杉、やることヒワイ杉 5話目:さきにガン寝杉、すっこけトシちゃん 6話目:わっるいぎんさん、逆戻り杉 です。えろほん的には2話目でもう完了してるかんじです。おかしーな! いつか書こうとおもってたネタを見抜いてしまったしののめさんに捧げます。 ほんとにこれでいーんですかしののめ氏。どーなのしののめ氏! 「家庭教師」 by 岡村靖幸 |