彼女に望まれた場所を彼女の言うとおりに手や、くちびるで甘やかしてやれることは高杉にとって確かに、喜びだ。
汗と水滴で張りついてしまった前髪を、かきあげてやれば、ほっとしたように閉じる彼女のまぶただったり、流れつづけたなみだのあとを舌で、なぐさめてやれば、くすぐったそうに身じろぎする笑みだったり、ちいさく鼻をすするおとだったりに、きもちが満たされるほど物足りなくなるのはからだのほうだった。なんでもないふりで隠すにも限度があるんだと、なにもしないでも彼女に気づいてもらえる可能性に、頼るつもりもなかった。太もものうえにまたがった華奢な腰を、高杉は自分の腰に触れ合うまで抱き寄せた。
昂った性器を、彼女のうすい腹に押しつけたら、見上げた彼女の黒い瞳も、からだも、怯えたように揺れた。

「イヤか?」

ことばにしたのはただ、さっきみたいな好き勝手をする気はないと、教えるだけのためだ。イヤだと言わせるつもりはなかった。言われないだけの自信もあった。彼女の肌ごしに、脈打つ熱のかたまりを、からだのなかに飲み込むことは気持ちのいいことなんだと彼女には、根気よく教え込んである。
彼女が、困ったように目を反らす。くちびるを噛んだのはイヤじゃないと、ことばにするのが恥ずかしいからだと、知ってるからこそもっと恥ずかしい目に合わせてやりたくなった。そのためのことばはけれど、閉じ込めておいた。また大暴れされたって、なだめてやれる余裕はもうなかった。
おとなしく返事を待つ気もなかった。彼女の横顔を隠す、長い髪を、かきあげてのぞいた耳のそばで、ねだることばはなまえひとつで充分だった。トシ、とささやいたとたん、うす赤く染まった彼女の、耳たぶが、やけに美味そうにみえて、くちびるで噛みついたそのすきに、身動きもしづらくなるほど首すじにすがりついてきた彼女の腕が、こたえだった。
片腕ずつ、丁寧に引きはがしていった彼女のからだを、シーツのうえに慎重に横たえていく。
見おろした彼女の目は怒ったような拗ねたような、よくわからない表情で高杉を見ていた。今度はいったいなにが気に入らないんだろう。いつもの場所から手さぐりでゴムを取り出すかたわら、視線で問いかけた高杉に彼女は、ムカつく、と、不満げにそっぽを向いた。

「結局いっつも、アンタの言いなりなンだよな」
「…冗談じゃねェ」

噛みちぎった四角いアルミの欠片を高杉は、床めがけて吹いて飛ばした。
勢いづいたまま彼女のからだにおおいかぶさったら、間近で覗き込んだ彼女の目はどこかとぼけたように見開いていた。つい、ため息が出た。

「オマエが俺のおもいどおりになったことなんざ一回もねーよ」

拗ねたいのはこっちのほうだと、言わせてくれないプライドを見透かしたように、得意げに笑う彼女がくれたのは色気もなにも感じさせない、ちゃちなキスだった。
おなじようなキスを返してやれたのはけれど、いちどきりだ。見つめ合う視線にわざと、性的な欲をにじませれば、笑みを、困ったようにゆがませる彼女の、伏せたまぶたのうえに落とした二度めは、彼女のなかに入れてほしいと、伝えるためのキスだった。高杉の肩を、骨のかたちに合わせて彼女のゆびが、握りしめる。
短く切りそろえてある彼女の爪は、どんなに食い込んだっていつも跡を残さなかった。それを知ってて、遠慮なくちからを込めてすがりついてくる彼女を、なだめるために与えた三度め、彼女の舌を、舌で誘い出しながら高杉は、彼女の、やわらかいいりぐちにも、硬くなった性器のさきで、キスをした。

「っん、んぅー…っ」
「っ、」

ちゅぷ、とちいさなおとが聞こえた、そのときにはもう、半分は彼女のぬかるんだなかにあった。薄く開いた彼女の目が、もどかしげにゆがむ。舌よりももっと、なめらかに濡れたそこがはやく飲み込ませてほしいとまとわりついて、ねだってくるまま、押しこんでしまいたい衝動をごまかすために高杉は、彼女の舌に乱暴にしゃぶりついた。ン、ン、と甘えた鼻声で啼く彼女の、くちびるからこぼれた唾液も舐めとってやりながら、ゆっくりと、奥に、もぐっていく。
彼女のなかを隠すためにある、ふっくらとしたふたつのひだが、いっぱいに割りひらかれたまま性器のつけ根に、ぴったりと寄りそった、そのときになってようやく、解放してやった彼女の、見上げてくるうるんだ瞳は、なにをされてるのかもわからないんだと言ってるようにみえた。それくらい、おさなかった。ゆびさきひとつぶんだけ開いたくちびるの隙間から、細かい息を彼女が必死に吐きだす。
ふたりぶんの唾液で濡れたそこが、動いてもいいと、ことばのかわりにくれるいつものつたないくちづけもいまは、待てなかった。彼女のあたまを片腕で抱き込みながら、反対側の耳もとに高杉は、熱い息の止まらないくちびるを寄せた。

「悪い、余裕ねェ」

謝るためのことばじゃなかった。優しくしてやれない言い訳だと彼女に、気づかれるまえに、引き抜いたものがいままで彼女に教えたことのない強引さで彼女の、湿った粘膜をじゅぷっ、とこすりあげた。

「ア!アアっ!」

いっぱいに血を吸って硬く、ふくれた性器を、彼女のなかに押しこんで、引きずりだすたびに、あふれた蜜がちゅぷん、ちゅぷん、とはじけるおとに、軋むベッドのおとが重なる。
おさない瞳をおさないまま、なみだでゆがませた彼女の、助けを求めるようにすがりついてくる両手にくらいはせめてこたえてやりたいと、できるだけ近づけたからだのしたで彼女の、しろいちいさな胸が、揺すぶられるからだに合わせてふるふると震えながら、ぷっくりととがったさきを高杉の胸にこすりつけていた。どうしようもなくけなげで、かわいいそこに、噛みついてやった。

「ひあンっ!」

瞬間、ぎゅううっ、とからみつくように性器を締めつけられて、おもわずこぼしかけたうめきは噛みついたままだったくちのすきまから、ふ、と、ただの吐息になって終わった。顔をあげた、拍子に、額をつたった汗とばらけた前髪を、あたまを振ってはねのけた。
真上から見おろした彼女になけなしの意地で笑みを、浮かべてやったら、黒い文字のうえに彼女がくちづけをくれた。鼻先に、くちづけ返してやるすきに、彼女とつながった場所に手を、這わせる。
ゆびさきが見つけた彼女の、ちいさなつぶを、ふたつのゆびで強くつまんだまま高杉は、張りつめた性器を彼女のなかのいちばん深いところまでおもいきり、突き入れた。

「っ  ぁ、アッ!」
「…っ」

こえと一緒に跳ね上がった彼女のからだを両腕でおさえこんでやりながら、吐きだす衝撃に歯を、食いしばる。一瞬、止まった呼吸を、おもいだすのも一瞬だった。焦る鼓動が内側から胸を叩く。
乱れる息を、無視して彼女の黒いまつげから、なみだを吸いとってやる。おなじだけ黒い前髪をよけて、汗のにじんだ額にくちづけたら、くちびるにもしてほしいと、彼女の両手がたどたどしく、それでも必死に、高杉のあたまを引き寄せよせようとするものだから、そのちからよりさきに、かわいさに負けた。薄く開いた彼女のくちびるを、くちびるで食んでやった。
甘ったれな彼女を今度こそ、寂しさから守ってやった。


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これで2トラップです。まとまったえろちっくはこれで終わりです。
あとは小出しの1トラップのためにおまけ的なつぎで完結です。


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